そしてさすがに女将株の貫目もあり、活気もあり、何処やらにまだ姥桜の色香さえもあって、西洋人と云うものは幾つになっても若いものだと感心させたのに、そののち少しずつ気が弱くなり、記憶力が乏しくなり、女子供にも押しが利かなくなってから、急に目に見えて年を取るようになったのである。
以前はお客をつかまえて、昨夜は何処の国の侯爵がお忍びでいらしったなどと法螺を吹いたり、英字新聞をひろげながら母国の東洋政策を論じて煙に巻いたりしたものだけれど、この頃ではとんとそう云うヤマ気はなく、ただうそをつく癖だけが病気のようになってしまって、直に底の割れるようなことばかりを云う。
あの威勢のよかったかみさんが、どうしてこんなになったのか不思議な気がするが、恐らく酒のせいなのだろうと、要はそう思うことがあった。