それから彼女は新派の俳優そっくりの口調になって、さも哀れっぽく涙ぐんだ眼に物を云わせて、いかにこの稼業が自分のような人間には堪えられないかと云うことを説明したり、一日も早く娘が自由の身になれるのを待ちこがれている母親の境涯を訴えたり、滔々として天を怨み世を呪う言葉をつらねる。
彼女はここへ来る前には女優をしていたことがあるから、ステージ・ダンスならエリアナ・パヴロヴァあたりには負けないくらいな腕がある、要するにこんな所にいる女とはたちが違う、自分のような才能のある者をこうして置くのは勿体ない話だ、巴里やロス・アンジェルスへ行っても立派に一本立ちが出来るし、堅儀な方面ならこれだけ語学の天分があったら重役の秘書にでもタイピストにでもなれる、だから自分を救い出して日活の撮影所か、外国の商館へ紹介してくれろ、そうして貰えれば月々の物は百円か百五十円も補助してくれたら沢山だと云うのである。
「あなた今だって一遍来れば五十円や六十円は使うじゃないの。