彼にはそんなことよりも、実は妾宅を構える手続きが事務的にひどく億劫な気がした。
女は普通の日本建ての借家でいい、家具さえ洋風にしてくれたらと云うのだけれども、建てつけのガタピシする狭くるしい部屋に這入って、歩くたびごとにもくもくふくれ上る畳を蹈みながら、散切り頭に浴衣がけでいられたりしたら、―――そしてうわべだけにもせよ、今までの贅沢が打って変って、急に几帳面に、妙なところで所帯持ちをよくされたりしたら、―――と、そう思うと何だかお座がさめるのであった。
しかし女の口説き工合で、いい加減にあしらっているうちにいつか冗談が本当にならないものでもなく、そうなればそれで、ずるずるに引き擦られて行きかねないのだが、彼女の愁訴はあまり芝居が多すぎて、懊れたり怒ったりすればするほどますます滑稽になるのである。