これが一と昔前だったら、あなたがたのような夫婦は世間にいくらもあったんで、私なんぞが現にその通りだったんだが、………いやもう、一年や二年どころじゃあない、五年も女房の傍へ寄り付かなかったくらいなもんだが、それでもそう云うものだと思って済んでいたんで、考えてみりゃあ今の世の中は大そうむずかしくなっていますよ。
しかし女と云うものは、試験的にもせよ、一度脇へ外れてしまうと、途中で『こいつはしまった』と気が付いても、意地にも後へ引っ返すことが出来ないようなハメになるんで、自由の選択と云うことが、実は自由の選択にならない。
―――ま、これからの女はどうか知れないが、美佐子なんかは中途半ぱな時勢の教育を受けたんだから、新しがりは附け焼き刃なんでね」