尤も二三箇月前に弘が東京へ行っていた折、何年振りかに二人ぎりで二た晩か三晩を過したことがあるにはあるけれど、その時の経験では、全く合い宿の旅客のように平気で枕を並べながら、互に何のかかわりもなく安眠することが出来たほどにも、凡そ夫婦らしい神経が麻痺してしまっているのである。
老人が今日はしきりに泊めることを主張したのは、恐らくそれが予定の計画だったのであろうが、その折角の心づかいを要は多少迷惑には感ずるものの、殊更それを避けようとするほど気が重くなりもしない代りには、今更何の足しになろうとも思えなかった。
「えらく蒸しますね。