見わたせばやまもとかすむ水無瀬川ゆふべは秋となにおもひけむ、わたしは院のこの御歌がすきであった。
あの「霧に漕ぎ入るあまのつり舟」という明石の浦の御歌や「われこそは新島守よ」という隠岐のしまの御歌などいんのおよみになったものにはどれもこれもこころをひかれて記憶にとどまっているのが多いがわけてこの御うたを読むと、みなせがわの川上をみわたしたけしきのさまがあわれにもまたあたたかみのあるなつかしいもののようにうかんでくる。
それでいて関西の地理に通じないころは何処か京都の郊外であるらしくかんがえながらはっきりところをつきとめようという気もなかったのであるがその御殿の遺跡は山城と摂津のくにざかいにちかい山崎の駅から十何丁かの淀川のへりにあって今もそのあとに後鳥羽院を祭った神社が建っていることを知ったのはごく最近なのである。