そして今いう洲は川のまん中にあるのではなくずっとこちら岸に近いところにある。
河原の砂利に腰をおろして待っているとはるかな向うぎしに灯のちらちらしている橋本の町から船がその洲へ漕ぎ寄せる、と、客は船を乗り捨てて、洲を横ぎって、こちら側の船の着いている汀まで歩いて来る。
思えば久しく渡しぶねというものに乗ったことはなかったが子供の時分におぼえのある山谷、竹屋、二子、矢口などの渡しにくらべてもここのは洲を挟んでいるだけに一層優長なおもむきがあっていまどき京と大阪のあいだにこんな古風な交通機関の残っていたことが意外でもあり、とんだ拾いものをしたような気がするのであった。