いや、結構でございました、おかげさまでいい保養をしましたというとせわしそうに息をはずませて先ず乾いた口をうるおしてからまた盃をわたしにさしてさあいま一つおかさねという。
まぶかに被っている鳥打帽子のひさしが顔の上へ蔭をつくっているので月あかりでは仔細にたしかめにくいけれどもとしはわたしと同年輩ぐらいであろう、痩せた、小柄な体に和服の着流しで通行のように仕立てたコートを着ている。
失礼ながら大阪からおいでになりましたかと言葉のふしぶしに京よりは西のなまりがあるのでたずねると、さようでござります、大阪の南の方にささやかな店を持ちまして骨董をあきなっておりますという。