なるほど、と、わたしはいつかその男のものがたる追憶の世界へひき入れられながらいうのであった、それでいったいその邸というのは何だったのです、毎年お父上がそこへ出かけて行かれたのには何か理由があったのでしょうね。
その理由でござりますかとその男はやや躊躇してからいった、それをお話し申しましてもよろしゅうござりますけれども見ず知らずのあなたさまをこんなところにいつまでもお引きとめしておきまして御迷惑ではござりますまいか。
でもそこまで伺ってあとを伺わないのでは心のこりです、そんな御遠慮にはおよびませぬというとありがとうござりますそれならお言葉にあまえまして聞いていただきますがといってさっきの瓢箪を取り出して心のこりと申せばここにまだこれだけござります、先ずそのまえにこれをかたづけてしまいましょうと盃をわたしに受けさせてまたあの、とく、とく、という音をさせるのである。