でもそこまで伺ってあとを伺わないのでは心のこりです、そんな御遠慮にはおよびませぬというとありがとうござりますそれならお言葉にあまえまして聞いていただきますがといってさっきの瓢箪を取り出して心のこりと申せばここにまだこれだけござります、先ずそのまえにこれをかたづけてしまいましょうと盃をわたしに受けさせてまたあの、とく、とく、という音をさせるのである。
さてそのひょうたんの酒をきれいに湑んでしまってからその男は語りつぐのであった。
父がそれをわたくしに話してくれましたのはまいとし十五夜の晩にその堤をあるきながら子供にこんなことをいってきかせても分るまいけれどもいまにお前も成人するときがくるのだからよく己のいったことをおぼえていてそのときになっておもい出してみてくれ、己もお前を子供だと思わずに大人にきいてもらうつもりではなしをするとそういってそれをいうときはいつもたいへん真顔になって、どうかすると自分とおなじ年ごろの朋輩を相手にしているようなもののいいかたをするのでござりました。