わたくしの叔母、いま申しました父の妹は、このお遊さんの幼な友達でござりまして娘時代には同じ琴の師匠のところへかよっていたものでござりますから、おいたちのことだの家庭のことだの輿入れのときのことだのいろいろと事情を知っておりましたのでそのとき父に話したのでござりますが、お遊さんにはきょうだいが大勢ありまして芝居へ連れてきておりました妹のほかにまだ姉さんも妹もありましたけれども中でもお遊さんがいちばん両親に可愛がられていてどんなわがままでもお遊さんなら許されるという風でとくべつあつかいにされていたそうにござります。
それはお遊さんがきょうだいじゅうでの美人でござりましたからそれもあったかも知れませぬけれども、ほかのきょうだいたちもお遊さんだけは別物のようにかんがえておりまして誰もそうするのがあたりまえだと思っているというようなふうであったと申します。
おばの言葉を借りますなら「お遊さんという人は徳な人だった」と申しますので自分の方からそうしてほしいというわけでもなくまた威張ったり他人をおしのけたりするのでもござりませぬが、まわりの者がかえっていたわるようにしましてその人にだけはいささかの苦労もさせまいとして、お姫さまのように大切にかしずいてそうっとしておく。