父はおばからそんな話をききまして一層お遊さんがすきになりましたがそののちはついぞよいおりもなくてすごしますうちあるときお遊さんが琴のおさらいに出るという噂を叔母がききつたえてまいりましてお遊さんをみたければわたしが一緒に行ってあげるからと父を誘ったのでござりました。
そのおさらいの日にお遊さんは髪をおすべらかしにして裲襠を着て香をたいて「熊野」を弾きました。
さようでござります、いまでも許しものを弾きますときには特にそういう儀式張ったことをする習慣があるのでござりましてずいぶんそのためには大袈裟な費用をかけるものなので金のあるお弟子には師匠がそれをやらせたがるのでござりますが、お遊さんもたいくつしのぎに琴のけいこをしておりまして師匠からすすめられたのでござりましょう。