なんでも叔母がその琴唄のすんだあとで楽屋へ会いにいきましたらまだ裲襠を着たままできょうのおさらいは琴はどうでもよいのだけれどもいっぺんどうしてもこういう姿がしてみたかったのだといってなかなか裲襠をぬぎたがらないでこれから写真をうつすのだなどといっていたそうにござります。
父はまたその話をききましてお遊さんの趣味がたまたま自分と一致していることを知ったのでござりました。
そういうわけで父は自分の妻にすべき人はお遊さんをおいて外にはないとおもったのでござりまして自分が長いあいだ胸にえがきつつ待っていた人はお遊さんであったことをかんじたのでござりましてその望みをそれとなく叔母に洩らしてみたのでござりましたが叔母は先方の事情がよく分っていたものでござりますから父のこころもちに同情はしてくれましたけれどもとうていそんなことはだめだからというのでござりました。