それにしてもそなたはどうして姉さんのむねのうちを知っていなさる、そういうのには何かしょうこがあっての上でなければならぬが姉さんがそういうことを洩らしたことがあるとでもいうのかと泣いているのを問いつめましたら、そのようなことを口へ出していうはずもなし聞くはずもありませぬけれども私にはよくわかっておりますと申すのでござりました。
おしずが、わたくしの母が、まだ世馴れないむすめの身としてそれをかんづいておりましたというのは不思議のようでござりますがのちに知れたところを申しますと初め小曾部の人たちはこのえんだんは年がちがいすぎるからと申してことわることにきめておりましてお遊さんも皆がそういう意見ならばといっていたのでござりましたが、それから或る日おしずがあそびに行きましたらわたしはこんなよい縁はないと思っているけれども自分がもらう婿でもないのにみんながああいっているものをぜひにという訳にもいかない、いやでさえなかったら静さんの口から行かしてほしいということをいい出してみたらどうかしらん、そうしたらわたしもあいだをとりなして巧くまとめてみせるけれどもとそういいますので自分にはさだまったかんがえもござりませなんだのでそれほど姉さんが気に入っているのだったら悪いはずはありますまい、わたしは姉さんがよいということならその通りにしますといいますとそういってくれるのはうれしいといって、十一、二の年ちがいなら世間には例のあることだし、それに何よりもあの人はわたしと話が合うような気がする、きょうだいたちがお嫁にいくとだんだん他人になってしまうのでしずさんだけは誰にも取られたくないのだけれどもあの人ならば取られたという気がしないできょうだいが一人ふえたようなこころもちになれるであろう、こういうと自分の都合であの人を押しつけるようだけれどもわたしによい人なら静さんにもよいにちがいないから姉に孝行をするとおもってここはいうことをきいておくれ、わたしのきらいな人のところへ行かれたのでは遊び相手がないようになってこれからさき淋しくてしようがないからというのでござりました。
まえにも申しましたようにつねづねみんなからいとしがられて我が儘を我が儘とかんじないように育った人でござりますから仲よくしている妹にあまえただけのことだったのでござりましょうがそのときおしずはお遊さんのそぶりのなかに何かしらいつもの甘えかたとちがったものがあるのを看てとりました。