さあ、それが、その頃のこととしましても町人の生れとしてぜいたくすぎるようでござりますが粥川へ嫁入りしますときにもこのむすめはこういうぐあいに育てたのだから今となってその習慣をあらためさせるわけにはいかない、それほど御執心ならばこれまで通りにさせてやって下さいますかと父親が念をおしましたくらいで御亭主や子供がありましても娘時代のおおどかな気風はいっこうかわりはなかったそうにござります。
だからお遊さんのところへいくとまるでお局さまのお部屋へでも行ったような気がしたものだと父はよくそう申しました。
ぜんたい父がそういう趣味でござりましたからなおそうかんじたのでござりましょうがお遊さんの部屋の中にある調度類というものは、みな御殿風か有職模様の品ばかりで手拭いかけからおまるのようなものにまで蝋塗りに蒔絵がしてあったと申します。