父がおゆうさんのことをお遊さまと呼ぶようになりましたのはその頃からでござりましてはじめはお静とのあいだでお遊さんのうわさをしますときにもうあんさんはあの人のことを姉さんというのはおよしなさいと申しますのでさまをつけて呼びますのがいちばん人柄にはまっているように思われてそう呼んだのでござりましたがいつかそれが口ぐせになりましておゆうさんの前で出てしまいましたらその呼びかたが気に入って二人のときはそう呼ぶのがよいというのでござりました。
そしていいますのにはみんながわたしをたいせつにしてくれるのはありがたいが私はそれをあたりまえにおもうように育てられてきていることを承知でいてもらいたい、いつでも人がたいそうらしく扱ってくれたら機嫌がよいというのでござります。
お遊さんのいかにも子供らしい我がままの例を申しましょうならあるとき父にもうよいというまで息をこらえていてほしいといって手を父の鼻のあなの前にかざすのでござりました。