けれども貞操というものはひろくもせまくも取りようでござりますからそれならといってお遊さんがけがされておらなんだとは申せないかもしれませぬ。
それについておもい出しますのは父は伽羅の香とお遊さんが自筆で書いた箱がきのある桐のはこにお遊さんの冬の小袖ひとそろえを入れてたいせつに持っておりましてあるときわたくしにその箱のなかのしなじなを見せてくれたことがござりました。
そのおり小そでのしたにたたんで入れてありました友禅の長じゅばんをとり出しましてわたくしの前にさし出しながらこれはお遊さまが肌身につけていたものだがこのちりめんの重いことをごらんといいますので持ってみましたらなるほど今出来の品とはちがいその頃のちりめんでござりますからしぼが高く糸が太うござりまして鎖のようにどっしりと目方がかかるのでござります。