そのおり小そでのしたにたたんで入れてありました友禅の長じゅばんをとり出しましてわたくしの前にさし出しながらこれはお遊さまが肌身につけていたものだがこのちりめんの重いことをごらんといいますので持ってみましたらなるほど今出来の品とはちがいその頃のちりめんでござりますからしぼが高く糸が太うござりまして鎖のようにどっしりと目方がかかるのでござります。
どうだ重いかと申しますからほんとうにおもいちりめんだといいましたら我が意をえたようにうなずきましてちりめんというものはしなしなしているばかりでなくこういうふうにしぼが高くもりあがっているところがねうちなのだ、このざんぐりしたしぼの上からおんなのからだに触れるときに肌のやわらかさがかえってかんじられるのだ、縮緬の方も肌のやわらかい人に着てもらうほどしぼが粒だってきれいに見えるしさわり加減がここちよくなる、お遊さんという人は手足がきゃしゃにうまれついていたがこの重いちりめんを着るとひとしおきゃしゃなことがわかったといいまして今度は自分がそのじゅばんを両手で持ちあげてみて、あああのからだがよくこの目方に堪えられたものだといいながらあだかもその人を抱きかかえてでもいるように頬をすりよせるのでござりました。
するとあなたがお父上にそのじゅばんを見せておもらいになった時はもうよほど成人しておられたのでしょうねとそのおとこのものがたりにそれまでだまって耳を傾けていたわたしがたずねた、そうでなければ少年のあたまでそういうことを理解されるのはむずかしかろうとおもいますが。