なおもう一つそれにもまして父のけっしんをにぶらせたのはお遊さんをいたわる気もちでござりました。
お遊さんのような人はいつまでもういういしくあどけなく大勢の腰元たちを侍らせてえいようえいがをしてくらすのがいちばん似つかわしくもありまたそれができる人でもあるのにそういう人を死なせてしまうのはいたいたしいというかんがえ、これがなによりもつよくはたらいたのだと申します。
父はそのきもちを打ちあけましてあなたはわたしの道づれにするにはもったいない人だ、普通のおんななら恋に死ぬのがあたりまえかもしれないがあなたという人にはありあまる福があり徳がある、その福や徳をすてたらあなたのねうちはないようになります、だからあなたはその巨椋の池の御殿とやらへ行ってきらびやかな襖や屏風のおくふかいあたりに住んでください、あなたがそうしてくらしていらっしゃるとおもえばわたしはいっしょに死ぬよりもたのしいのです、こういったからとてよもやあなたは私がこころがわりしたの死ぬのがこわくなったからだのというようなふうには取らないでしょう、そんなせせこましいりょうけんが薬にしたくもない人だから私も安心していえるのです、あなたは私のような者を笑ってすててしまうほど鷹揚にうまれついた人ですとそういったのでござりました。