与次郎太夫は感心な男で、舊恩のある殿様のお身をお引き受け申し、家の近所の岩窟の中へお隠し申して、内證で食べ物を運んでいたが、日が立つにつれてそれが名主の耳に這入り、包みきれなくなってしまった。
それで殿様も与次郎太夫の難儀を察しておやりになり、もはや天運が盡きたものと観念なされて、兵部大輔の陣所へ訴えて出るように御自分から仰せつけになったのだと云う。
乳母は娘を物蔭へ呼んで、町で聞いて来た一部始終を告げてから、又しても兵部大輔が憎いと云って泣いた。
与次郎太夫は感心な男で、舊恩のある殿様のお身をお引き受け申し、家の近所の岩窟の中へお隠し申して、内證で食べ物を運んでいたが、日が立つにつれてそれが名主の耳に這入り、包みきれなくなってしまった。
それで殿様も与次郎太夫の難儀を察しておやりになり、もはや天運が盡きたものと観念なされて、兵部大輔の陣所へ訴えて出るように御自分から仰せつけになったのだと云う。
乳母は娘を物蔭へ呼んで、町で聞いて来た一部始終を告げてから、又しても兵部大輔が憎いと云って泣いた。