鼻の片側に陰が出来て、眼瞼を閉じている両方の眼のまわりが穴のように暗くなっているのは、夕方の光線の作用もあろうけれども、関ヶ原で敗れてから一昨日刑罰に処せられるまで、半月の間の心身の苦労が、父を幾らか窶れさせたのではないであろうか。
飢えと、寒さと、腹下しと、六日間の野宿のあとで、縛られ、小突かれ、車で方々を引っ張り廻されて、誹謗に抗し屈辱に堪え、或は瞋り、或は悶え、或は悔みなどしたとすれば、さしもの父も痩せずにはいなかったであろう。
だが、それでいて、噂を聞いて想像していたほど、無念の形相を浮かべてはいなかった。