そうしてそんな場合には、通行人が覚えず足をとゞめる程の声で、ぶつ/\ひとりごとを云う癖があった。
行者のことだから呪文か陀羅尼のようなものを唱えているのかも知れないと、そう思って通り過ぎる人が多かったけれども、どうも呪文ではないらしい、普通の言葉で何かしゃべっているらしいと云う者が出て来て、追い/\町の人たちが聞き耳を立て、そうっと傍へ近寄ってそのひとりごとに注意すると、
天下は天下の天下なり、関白家の罪は関白の例を引き行はる可きの事、尤も理の正当なるべきに、平人の妻子などのやうに、今日の狼藉甚だ以て自由なり、行末めでたかるべき政道にあらず、吁、因果のほど御用心候へ、御用心候へ