それが、不明瞭な発音で、自分だけに分ればよいと云う気持で云われるのであるから、一度や二度ではなか/\聞き取りにくいのであるが、ちょうど一二年前に彼が畜生塚のほとりへ小屋を造って住み出してから、長い間常に同じことを云っているので、いろ/\な人がその文句を聞いた上でたしかめられた。
そうしてそれがたしかめられると、次第に市民が此の行者を奇人か狂人扱いにして、家の内へ呼び込んだり物を施したりするのを厭うようになったので、近頃ではだん/\窮迫の度がはげしく、もう殆どほんとうの乞食になりかけていた。
と云うのは、いったい彼は何処から此の橋の下へ流れて来た者か分らないけれども、今のような文句を暗誦するところを見れば、恐らく殺生関白の遺臣ではないのか。