が、それにしても此の法師は、町の人たちが噂するような狂人であろうか、こんな工合に話す様子を今宵始めて見るのであるが、こうして面と向いながらその云うところに耳を傾けると、なるほど、奇人であるかは知れないが、狂人であるとは考えられない。
事実を云えば、乳母はさっきから娘の手を取って一歩を前に蹈み出した姿勢のまゝ、もう少し聞いたら帰りましょう/\と思いつゝ、だん/\惹き込まれて行くのである。
尤も乳母にしてみれば、さっきの私語を立ち聞きしたと云う以上、どう云うつもりで自分たちを呼び止めたのか、その点が気がゝりなのでもあったが、しかしどうやら害心を蔵していないだけは明かであった。