「憚りながら、あの時世間では、関白殿が此のような悲運にお遇いなされるのも治部殿が讒言をなされたからじゃと、多くの人が申しておりました。
お身たちの前でこれは少々失礼でござりますけれども、治部殿は太閤殿下のおん覚えめでたく、天下の仕置を思いのまゝにしていらしったのでござりますから、たとい御謀叛のおうたがいがありましたにせよ、何とかお執成しをなされましたらようござりましょうに、忠義顔をして五つの咎を十ほどにも吹聴なされ、いらざることを殿下のお耳へお入れ申して、骨肉のあらそいに油を注ぐようなことを、―――いや、御免下さりませ、ほんとうはそうでないのかも知れませぬが、世間の人はそう思っておりました。
それに又、なんで頑是ない方々やお女中方のお命を助けてお上げなされませなんだか。