然るに祈祷の効があって若君が誕生されたので、世間は挙って豊臣家の萬歳を唱え、太閤は五十七歳の老齢に達して世継ぎの子を儲けたうれしさの餘り、その顔を見るために名護屋を八月の二十五日に立って、わざ/\大坂へ帰って来た。
斯くして三成の心配がだん/\事実となる形勢を生じ、左衛門尉は己れの使命の軽からぬことを胆に銘じたのである。
彼はその年の秋頃には首尾よく勾当の位を得、「藪原辰一」と云う盲人に化けてしば/\聚楽の城内へも召されるようになっていた。
然るに祈祷の効があって若君が誕生されたので、世間は挙って豊臣家の萬歳を唱え、太閤は五十七歳の老齢に達して世継ぎの子を儲けたうれしさの餘り、その顔を見るために名護屋を八月の二十五日に立って、わざ/\大坂へ帰って来た。
斯くして三成の心配がだん/\事実となる形勢を生じ、左衛門尉は己れの使命の軽からぬことを胆に銘じたのである。
彼はその年の秋頃には首尾よく勾当の位を得、「藪原辰一」と云う盲人に化けてしば/\聚楽の城内へも召されるようになっていた。