と云って急に長大息するのである。
「あゝ、ほんとうに、あの時分の辛さは大抵ではござりませなんだが、それでも愚僧は、まだあの時分には、姿は座頭を装うておりましても、こゝろは石田治部少輔殿の家来、下妻左衛門尉であることを忘れてはおりませなんだ。
今の勤めは戦場で武勇を競いますよりも幾層倍の苦しみの上に、智慧と分別とがのうてはかないませぬけれども、それもこれも主君のおんため、天下のためと存じまして、身を粉に砕きますとてもお城の様子を探らずに置こうかと、思いきわめていたのでござります。
と云って急に長大息するのである。
「あゝ、ほんとうに、あの時分の辛さは大抵ではござりませなんだが、それでも愚僧は、まだあの時分には、姿は座頭を装うておりましても、こゝろは石田治部少輔殿の家来、下妻左衛門尉であることを忘れてはおりませなんだ。
今の勤めは戦場で武勇を競いますよりも幾層倍の苦しみの上に、智慧と分別とがのうてはかないませぬけれども、それもこれも主君のおんため、天下のためと存じまして、身を粉に砕きますとてもお城の様子を探らずに置こうかと、思いきわめていたのでござります。