もっとも一の御台さまとして諸人に敬い冊かれていらっしゃいましたから、うわべは人の羨みそうなお身の上でござりましたけれども、御夫婦とはたゞ名ばかりの、めったに殿にお逢い遊ばす折もなく、あじきない月日を送っていらしったのでござりました。
さればおしろでは明けくれ御酒宴がござりまして、賑やかなことでござりましたけれども、左様な席へもお出ましにならず、いつも奥御殿にたれこめてのみおくらしなされましたので、とかく御気分の沈みがちな時が多かったようでござりました。
でも幾分かその淋しさをお忘れなされて、お紛れになっていらっしゃいましたのは、おみや御前と申すお方がいらしったからでござります。