「いや、人間と云うものは、そのとき/″\の境涯につれて変れば変るものでござります。
見らるゝ通り愚僧は今も不愛想な、陰気な性分でござりますが、ましてその頃はまだ武士気質の、律義な男でござりましたから、お女中の御機嫌をうかゞうことなどは出来そうもござりませなんだのに、お二た方の御前へ出ますと、何卒お笑い遊ばすようにと懸命になりますところから、洒落や軽口はおろかなこと、思いも寄らぬ作りばなしの筋などを自然とたくみ出しまして、興に任せて譃八百を申し上げるのでござりましたが、ぜんたい自分の何処を押せば斯様な音が出るのであろうと、我と我が身をあやしんだのでござりました」
その五