するとその姿にお眼をとめられ、あれを見よ、あそこに孕み女が通るが、あの腹の大きいことはどうだ、あんなにえらく膨れているのは双生児が這入っているのかも知れぬ、腹を断ち割って見てやりたいなと仰っしゃって、あの女を連れて参れとの御意なので、御前におりました若殿原が早速引き立てゝ参りました。
でもその時は益庵法印が居合わされて機転を利かされ、そっとその女の傍へ寄って芹や薺を懐へ押し入れさせ、此の者は懐姙ではござりませぬ、腹がふくれておりますのは、これ、御覧なさりませ、さま/″\な若菜を此のように懐へ入れているのでござります、それに此の女は年老いた者でござりまして、これらの菜をば都へ売りに参るのだそうでござりますと、巧い工合にお欺しなされましたので、殿様も俄かにお笑いなされ、それならよし/\と仰っしゃって、事なく済んだと申します。
かような話はまだ沢山ござりまして、その女のように助かった者もござりますけれども、女では孕み女、男では肉附きのよい、くり/\と肥え太った男を斬るのがお好きで、そう云う人間を捜すために、夜な/\町へ辻斬りにお出かけなされましたとやら。