昔は自分が道具にお使いなされた男、それが今度は敵方の手先を勤めて、自分を搦め取ったと云うのは、因果が報いて来たのではないか、そうしてみれば自分で蒔いた種を自分で刈ったゞけのこと、今更誰を恨もうと、悟りすましていらっしゃるかも知れませぬ」
さて順慶は、此のあたりから次第に自分自身の問題、己れの心の変遷を話し始めるのである。
「ところで、その時分、治部殿よりは愚僧の宿へも毎々お使者がござりまして、その後一向便りがないのはどうしたと云うのだ、近頃緩怠ではないかと、数度に亙ってお叱言を戴きましたが、それでも愚僧は、さしたる證拠もござりませぬのに、何として告げ口を致しましょうや。