ところで、順慶はそのことをはっきり語ろうとしないけれども、彼がとき/″\洩らしている御台様の不仕合わせなるものは、彼女とその連れ子、即ち母北の方とおみや御前との間に存する或る不自然な事情を指しているのであろう。
右について聚楽物語巻之下「若君並三十餘人の女房達洛中渡さる、附最後の事」の条の一節に云う、
十七番はおみや御前云々、是は一の台殿の御娘なりしを聞召し及び、わりなく仰せられて、召迎へ給ひしとなり、されば此由太閤相国聞食し、あるまじき事の振舞かな(中略)とて、愈〻御憤り深く思召しければ、様々に頼りて、御様変へ、命計りをと申させ給へども、御許なきとぞ聞えし