残る者共も成る程これは理窟であると心づいて、我も/\と腹を切りかけるのを、松田の郎党や寺の坊主たちまで出で合い、一人に三人も五人も取り付いて、先ず太刀を奪い取った。
大膳はその様子を見て、不覚なる者共哉、誠の志があるなら、命を長らえて後世を弔うてくれたらよいのに、左様な早まったことをされては、冥途の障りとなるばかりである、某とても助けてさえ戴けるなら、只今にも出家して主君の菩提を弔うであろうものを、お赦しのないのが残念であると、そう云って涙に咽んだので、それでは是非に及びませぬ、仰せの通り私共は出家いたして主の御房の御弟子になり、お後をねんごろに勤めましょう、お心安く思し召して御最期の御用意をなさりませと、郎党共も今は力なくあきらめてしまった。
大膳は斜めならず喜び、行水をして佛前に香を焚き、客殿の畳を裏返しに重ねた上で水盃を酌み、脇差を取って西に向うと、立ちながら腹を十文字に切った。