白井の女房は、十二歳の時に備後守に見え初めてから片時も離れず連れ添うていたが、今度の事件が起ってから夫に別れて北山辺に忍んでいたところ、備後守が腹を切ったのを聞いて、二歳になる姫を乳人に抱かせ、大雲院の貞安上人の許を訪ねて来た。
これは備後守が妻や子でござります、頼む方ない身の上となりましたから、夫を慕うて参ろうと存じますが、跡の弔いを何分お願い申しますと云うので、上人は思案をし、兎も角も奥へ請じ入れて、徳善院へその旨を知らせ、指図を仰いだ。
依って法印から太閤に言上すると、男の子ならば害すべし、女は助けて取らせよと云う命令である。