東塔をめぐる五つの谷には山桜が咲き乱れて、四十六坊をつゝむ青葉若葉に、梵鐘の響きが蒸されるような、鬱陶しい、ものうい陽気が続いた。
或る日の明け方、二人は上人の仰せをうけて、横川の僧正の許へ使いにやられた帰り路に、人通りの稀な杉の木蔭に腰をおろして、暫く疲れを休めて居た。
千手丸はおり/\深い溜息をつきながら、兜率谷の底から立ちのぼる朝靄の、尾上の雲にながれて行くさまを、一心に視つめて居たが、ふと、
東塔をめぐる五つの谷には山桜が咲き乱れて、四十六坊をつゝむ青葉若葉に、梵鐘の響きが蒸されるような、鬱陶しい、ものうい陽気が続いた。
或る日の明け方、二人は上人の仰せをうけて、横川の僧正の許へ使いにやられた帰り路に、人通りの稀な杉の木蔭に腰をおろして、暫く疲れを休めて居た。
千手丸はおり/\深い溜息をつきながら、兜率谷の底から立ちのぼる朝靄の、尾上の雲にながれて行くさまを、一心に視つめて居たが、ふと、