その文の主は、あなたさまと仲好しであった千手丸さま、今の私のあるじでございます。
ことしの春、山を降りると程なく恐ろしい人買いに浚われて、長い間いたましい思いをなさいましたが、未だに御運が盡きなかったのでございましょう、ちょうど二た月ばかり前に、深草の長者の許へ下男に売られたのが縁となって、あの優しいみめかたちを長者の娘に見初められて、今では其の家の聟になり、何不足ない羨ましい御身分におなりなさいました。
ついてはいつぞやの御約束通り、浮世の様子をあなた様へお知らせ申したく、この文を持参いたしたのでございます。