幸子は、二三年前迄は降る程あった申込みが急に跡絶えるようになったことを思い、その原因が、昔の格式に囚われて不相応に高い望みを懸け、来る話来る話を片っ端から断ってしまったことにもあるが、一つには妙子の世評の悪いことが影響を及ぼしているのだと思うと、どうしても自分に責任の一半があるように感じられて、気が咎めていたのであったが、これはその矢先に持ち込まれた話なのである。
一時は、もうすっかり世間の同情を失い、誰も縁談など持って来ないようになったのかとまで悲観していた彼女にして見れば、たとい望み薄な、アヤフヤなものであったにしても、これを頭から撥ね付けるようなことをしては、又世間の反感を買いはしないか、と云う危惧があった。
今度の話に応じて置けば、不成立に終ったとしてもこれを切掛けに後の話が出て来そうだけれども、これを断ったら、又当分何処からも持って来なくなるかも知れない、まして今年は雪子が厄年なのではないか、と云う風に思えた。