が、先年阪大で診て貰った時に、注射は何回も続けなければ効果がありませんし、結婚なされば直るものですからそれには及ばないでしょうと云われたことがあり、見馴れてしまうとそう目障りになる程の欠陥とも感じられず、身内の者だけが気にするので、世間は格別問題にしていないようにも思え、それに何よりも、当人が一向神経に病んでいないところから、そのままにしていたのであったが、生憎今日のように厚化粧をすると、却ってそれがお白粉の地の下から浮き上って、斜めに透かした時に検温器の水銀のように際立つのであった。
貞之助は今朝化粧部屋で彼女が拵えをしていた時から心づいていたので、今も電車の中で見ると、確かにいつもよりもはっきりと分り、どう贔屓目に見ても人の注意を惹かずに済むとは考えられないのであったが、幸子も口には出さないで、夫が何を考えているのか大凡そ察していた。
そして、最初から今度の見合いに熱意を抱き得なかった夫婦は、ひとしお希望が持てないような暗い気持がするのを、なるべく顔に出さないようにしながらも、互にそれを読み取っていたのであった。