お三時に、と云って冷麦の丼が運び込まれたあとで、幸子だけが打ち合せのために母屋の方の一と間へ呼ばれて、未亡人と対坐したが、正直のところ、彼女は五分か十分も話を聞いているうちに、早くも今日の招待に応じたことを後悔する念が湧いた。
未亡人の説明の中で彼女が最も意外の感を抱いたのは、この間から一番重要な疑問になっていた点、―――先方の人物性行について、未亡人が何も知らないばかりでなく、その沢崎家の当主なる人と、まだ会ったこともないのだ、と云うことであった。
未亡人の言に依ると、沢崎家と菅野家とは昔から旧家同士の仁義を取り交しており、亡くなった主人も、沢崎家の先代や当主と別懇にしていたようだけれども、主人の死後、忰は余り附き合っていない。