それから、ついでにその蛍を掴まえて、―――手を這われると気味が悪いので、塵紙を円めてそうっと包んで、―――雨戸の無双窓の隙間から外へ放したが、見ると、先刻植込みの間だの池の汀だのにあんなに沢山きらめいていた蛍が、大方あの小川のほとりへ逃げ帰ったのでもあろうか、殆ど残らず飛び去って、庭は漆のような闇に復っていた。
彼女は再び寝床へ這入ったが、矢張工合よく寝付かれないので、彼方此方寝返りを打ちながら、すやすやと寝ているらしい三人の寝息に耳を澄ました。
八畳の間の、床の間に沿うて幸子、その隣に妙子、二人の向う側に雪子と悦子、と云う風に、四人が頭を両方から向い合せて寝ているのであったが、ふと幸子は、誰かが微かな鼾を掻いているのに気づいて、なおよく耳を澄ますと、それは雪子であるらしかった。