「悦ちゃん、蛍が逃げてしまうわ」
と、窓際に吊るしてある蛍籠を取って、悦子の膝の上に載せた。
それは昨夜、菅野家の爺やが悦子のために間に合せに拵えてくれた、缶詰の空缶の底を抜いて両側にガーゼを張った即席の蛍籠で、悦子はそれを大事そうに汽車の中まで持ち込んでいたのであったが、いつの間にかガーゼを括ってある紐が緩み、その隙間から蛍が一二匹這い出していた。
「悦ちゃん、蛍が逃げてしまうわ」
と、窓際に吊るしてある蛍籠を取って、悦子の膝の上に載せた。
それは昨夜、菅野家の爺やが悦子のために間に合せに拵えてくれた、缶詰の空缶の底を抜いて両側にガーゼを張った即席の蛍籠で、悦子はそれを大事そうに汽車の中まで持ち込んでいたのであったが、いつの間にかガーゼを括ってある紐が緩み、その隙間から蛍が一二匹這い出していた。