そして、お春が不意を喰ってヘドモドしていると、早う戻って来なさいや、と云い捨てて向う側へ渡って、神戸行きのバスに乗って行ったが、あれから真っ直ぐ帰らはりましたやら、それとも何処ぞ、神戸へでも行かはりましたやら、………と云うのであった。
芝居の廊下での話はそれだけであったが、幸子はお春がまだ何か知っていそうな気がしたので、翌々日の朝、悦子のピアノの稽古日に、妙子が留守になるのを待って、今日は悦子にお照を附けて出して遣り、お春を応接間に呼び入れてあとを聞いた。
と、お春は、もう外に存じませんけれど、………と云いながら又こんなことを話した。