で、さしあたり幸子は、この出来事を自分だけの胸に収めて遠くから眺めることにしたものの、そう云う風に妙子がおおびらで奥畑と交際し始め、二人で大胆に出歩いているとすれば、いつ貞之助の眼に触れない限りもない、と云うことも考えられ、奥畑をひどく嫌っている夫が、このことを知ったら必ず意見があるであろう、とも考えられたので、或る日夫に打ち明けてしまったのであった。
すると夫は案の定不愉快そうな顔をして聞いていたが、それから二三日後の朝、書斎へ這入って来た幸子に、まあそこへ坐れと云って、僕は啓坊の勘当された事情を或る所から聞いて来た、と云うのであった。
そして、実はこの間の話の中で、勘当と云うことが不審だったので、手を廻して調べて見たところ、啓坊は奥畑商店の店員とグルになって、店の品物を持ち出したのだそうではないか、それも今度だけではない、前にもそんなことが一二遍あったのだけれども、その時分にはいつもお母さんが兄さんに詑びを入れて堪忍して貰っていたのだそうだ、しかし今度はお母さんがいないし、たびたびのことであると云うので、兄さんがえらく立腹して訴えると云ったのを、まあまあと宥める者があって、お母さんの三十五日が済むのを待って勘当と云うことになったのだそうだ、―――と、そう貞之助は語り出した。