ここ一箇月程の間に二人が見たものを数えても、「アリババ女の都へ行く」、「早春」、「美しき青春」、「ブルグ劇場」、「少年の町」、「スエズ」などがあった。
そして、街を歩きながらもひょっと妙子に行き遇いはしないかと気を付けたが、ついぞ見かけたこともなかった。
あまり音沙汰がなさ過ぎるので、或る朝お春を見に遣ると、今朝はまだお寝みになっていらっしゃいましたがお元気でした、御寮人様や雪子娘さんが心配なすっていらっしゃいますから一遍いらしって下さいませと申し上げましたら、そのうちに行くよって心配しやはらんように云うといてと仰っしゃって、笑っていらっしゃいました、と云うことであった。