そして、街を歩きながらもひょっと妙子に行き遇いはしないかと気を付けたが、ついぞ見かけたこともなかった。
あまり音沙汰がなさ過ぎるので、或る朝お春を見に遣ると、今朝はまだお寝みになっていらっしゃいましたがお元気でした、御寮人様や雪子娘さんが心配なすっていらっしゃいますから一遍いらしって下さいませと申し上げましたら、そのうちに行くよって心配しやはらんように云うといてと仰っしゃって、笑っていらっしゃいました、と云うことであった。
その後十二月の或る週に、待ち焦れた仏蘭西映画「格子なき牢獄」が懸ったので、二人はそれを見に行ったが、その日から幸子が風邪を引き込んだので、外出歩きは当分見合わすことになった。