あまり音沙汰がなさ過ぎるので、或る朝お春を見に遣ると、今朝はまだお寝みになっていらっしゃいましたがお元気でした、御寮人様や雪子娘さんが心配なすっていらっしゃいますから一遍いらしって下さいませと申し上げましたら、そのうちに行くよって心配しやはらんように云うといてと仰っしゃって、笑っていらっしゃいました、と云うことであった。
その後十二月の或る週に、待ち焦れた仏蘭西映画「格子なき牢獄」が懸ったので、二人はそれを見に行ったが、その日から幸子が風邪を引き込んだので、外出歩きは当分見合わすことになった。
妙子は、悦子の学校が明日から休暇になると云う二十三日の朝、殆ど二箇月ぶりにやって来て、正月の衣類を鞄に詰め、一時間程話してから、松の内が過ぎたら年始を祝いに来ると云って帰ったが、正月十五日の朝に来て、小豆粥を食べ、その日は少しゆっくりして午後に帰った。