かりにも保険会社の社長で、大邸宅に住んでいる三十五歳と云う初婚の紳士が、つい半歳前に雇い入れたばかりの、身寄りもなければ氏も素姓も全然分らない渡り者の一女性と結婚するなんて、たといその女がどんな美人であったにしても、日本人の常識ではとても考えられないことだが、………英吉利人は保守的だと聞いていたけれども、結婚などについては自由な考を持っているのだろうか。
お金持の男と結婚して見せると云ったカタリナの言葉を、世間を知らない若い女の夢のような望みとばかり思って、好い加減に聞いていたけれども、カタリナのつもりでは案外本気だったので、自分だけの美貌があればそう出来ると云う確信を持って日本を立って行ったのであろうか。
亡命の白系露人の娘と、大阪の旧家の箱入娘とを比較するのは間違っているかも知れないが、でもまあカタリナのような女もあるのに、自分たち姉妹は何と云う意気地なしであろうか。