そんなことがあってから二三週間も後だったろうか、―――あの井谷の美容院へは、幸子も雪子も引きつづき出入りしていたので、井谷も絶えず雪子のことを念頭に置いていてくれるらしかったが、或る時行くと、「奥さんは大阪の丹生さんと云う方を御存じでいらっしゃいますか」と云う話が出た。
「井谷さんはどうして丹生さんを御存じ?
と云うと、「わたくしは最近ちょっとお目に懸っただけなんでございますが」と云って、この間或る人の出征を祝う歓送会の席上で紹介されたので、話し合って見ると偶〻その方が奥さんのお友達でいらっしゃることが分り、二人で暫くあなた方のお噂をした。