と云うと、「わたくしは最近ちょっとお目に懸っただけなんでございますが」と云って、この間或る人の出征を祝う歓送会の席上で紹介されたので、話し合って見ると偶〻その方が奥さんのお友達でいらっしゃることが分り、二人で暫くあなた方のお噂をした。
丹生さんの奥さんは、蒔岡さんの奥さんとは随分仲好しなんだけれども近頃は掛け違って長いことお目に懸らない、いつだったか二三人で蘆屋のお宅をお訪ねしたら黄疸で臥ておられたことがあった、それがもう余程前で、それから三四年になると仰っしゃっていらっしゃいましたが、と云うので、幸子は成る程そんなこともあったのを思い出した。
たしかその時は、下妻夫人と、名前は忘れたが東京の何とか云う凄いハイカラな気障な奥さん―――亜米利加帰りの、「何々であんすけど」と云う不思議な言葉づかいをする夫人―――が一緒で、病気を押して面会した幸子はいつになく無愛想にあしらい、怱々に帰してしまったのであったが、それに気を悪くしたのか、あれきり丹生夫人は訪ねて来たことがなかった。