この間の件のことで只今丹生さんから電話があり、今日の午後六時に嶋の内の「吉兆」と云う日本料理屋まで、私にお嬢さんをお連れして来るようにと云うことですが、如何でしょうか、もう簡単に、ちょっと夕飯を呼ばれに行くと云う軽いお気持で、と云っておられますが、なお丹生さんの意見として、なるべくお嬢さんお一人の方がいいけれども、誰方かお附き添いになるのなら旦那様にして、奥様は止めて戴きたい。
孔雀が羽根をひろげたような方がいらっしゃると、お嬢さんの印象が稀薄になるからと云うことで、これは私も同感ですから、どうかそうして戴くように願います、電話でこんな話を申上げるのは失礼ですが、先日あらかた御承知置きを願ってあることだし、何しろ急なことなので、………と、直ぐにも返事を聞きたそうに云うのであったが、まあ一二時間待って下さいと、幸子は一と先ず切って貰った。
そして、雪子ちゃんはどう思う、今日聞いて今日なんて、私もああ云う急勝は寔に性に合わないのだけれども、しかしあれから此方、始終雪子ちゃんのことを気に懸けていてくれる井谷さんの親切は感謝しなければならない、それに丹生さんも昨日や今日の附合いではないので、私等のことはよく分っているのであるから、まさか問題にもならない人を向けて来る筈もあるまいと思う、と云うと、でもこの間の話だけでは何だか余り頼りない、電話でもよいから、直接丹生さんの奥さんにもっと委しく聞いて見て、と雪子が云うので、幸子は丹生夫人を呼び出して先方のことをあれこれと尋ねて見た。